中古のマンションは、数千万円や数億円で売られていることがあります。
しかし、知っている方は少ないかもしれませんが、実際に値引き交渉をすることもできるのです。
しかも、値引きする金額は100円や200円程度ではありません。
価格が高いだけに、上手に交渉ができれば数百万円も値引きできる可能性もあるのです。
しかし、残念ながら「値引きしてください」と直接頼んだからと言って、簡単に値引きが実現するわけではありません。
うまく交渉できなければ、本来欲しかった中古マンションを買えなくなるかもしれません。
ですので、本記事では、中古マンションの値引き交渉を成功させるためのポイントや注意点について説明していきます。
中古マンションの購入を検討している方にとって、この内容はとても役立つものとなっていますので、ぜひ注意深くお読みください。
中古マンションの値引き交渉する前に知っておくべきこと
中古マンションでは、まず「定価」というものが存在しません。
これはつまり、売主が自由に価格を設定することができるということです。
つまり、売主が了承すれば価格を下げることも可能です。
そのため、買主は価格交渉をすることができるのです。
同時に、売主もマンションを売りたいと考えているので、交渉に応じる可能性もあります。
「売り出し価格」と「成約価格」の違い
「売り出し価格」とは、中古マンションが売り出される際に設定される参考価格のことです。
これは、中古マンションの広告やチラシに掲載される価格であり、商品の値札のようなものです。
一方、「成約価格」とは、実際に中古マンションが売買契約が成立した際の最終的な金額のことを指します。
不動産売買では、買主側が売り出し価格を基準に値引き交渉を行うことが一般的です。
そのため、多くの場合、成約価格は売り出し価格よりも少し低くなることがあります。
実際の不動産取引では、売主側も値引き交渉を考慮しているため、売り出し価格を若干高めに設定していることが一般的です。
これにより、買主側が値引きを要求しても、売主側の利益が損なわれることなく、取引が成立することが可能となります。
値引き交渉するタイミングは「購入申し込みのとき」限定
いつ値引き交渉するか、具体的には買主が物件を購入したいと申し込む際です。
買主が物件の条件に満足し、内見を経て購入を決めた場合、買主は売主に対して「購入申込書」または「買付証明書」という書面を提出します。
この申込書を提出する段階では、購入はまだ確定していません。
申込書は、売主と交渉する権利を得るためのものです。
買主は申込書に署名と捺印をし、希望の購入価格を記入します。
「希望」ということなので、この金額は売り出し価格と一致する必要はありません。
希望の購入価格と売り出し価格に差がある場合、申込書の提出によって交渉が開始されるのです。
実際に交渉するのは営業担当者
「交渉」という言葉を聞くと、多くの人は売り手と買い手が価格や条件で話し合う場面を想像するかもしれませんが、実際には異なります。
実際に値引き交渉を行うのは、不動産会社の営業担当者同士なのです。
一般的に、売主と買主は直接対話することはありません。
そのため、不動産会社や担当者を選ぶ際には、「交渉力」や「話術」なども注目する必要があります。
売却価格や条件の交渉においては、営業担当者が買手の代表として交渉する役割を担っているわけです。
中古マンションの値引き額の相場
新品のマンションが一般的に価格で広告されるのに対して、中古マンションでは価格に値引きが加算されるケースがあります。
値引きの額は、特定のマンションや売主の状況によって異なるため、一般的な「相場」という概念では難しいです。
しかし、私は過去に大手不動産会社で働いていた経験を持っており、多くの不動産売買の実際を目にしてきました。
そこで、よくある値引きの傾向についてお話しします。
まず、古いマンションや設備が古いマンションの場合、価格が下がる傾向があります。
また、売主が急いで売りたい場合や、売り主が他の物件に資金を投資する必要がある場合も、値引きが多いことがあります。
値引き額は「1割まで」が相場
要約すると、マンション価格によって値引きの相場が異なります。
一般的には、価格が2,000万円以下の中古マンションでは、価格交渉で1割程度の値引きが可能です。
ただし、価格が高くなるにつれて、1割の金額も大きくなります。
5,000万円の場合は500万円、1億円の場合は1,000万円です。
ただし、売り出し価格が5,000万円以上のマンションの場合、1割の値引きまで行くことは少ない傾向にあります。
例えば8,000万円のマンションが7,200万円まで値引きされることは滅多にありません。
一般的に言えるのは、5,000万円を超える中古マンションでは、値引き幅は5%程度が限度ということです。
売り出し価格が8,000万円であれば、値引き幅は400万円程度です。
値引きの相場は一概には言えませんが、「高くて1割」という感覚を持つと良いでしょう。
そして価格が上がるにつれて、1割の値引きは難しくなる傾向があると覚えておくと良いです。
「端数捨て」の値引きは多く見られる
割引の範囲について、私は「1割高い」と言いましたが、多くの商取引で見られるのは「切り捨て」という範囲での割引です。
切り捨てとは、例えば「2,050万円」ならば「2,000万円」、「5,980万円」ならば「5,900万円」といったように、小数点以下を切り捨てて、整数のキリのいい金額にすることを指します。
切り捨ての割引がよく見られる理由は、売り手側もあらかじめ切り捨てに応じる姿勢でいることが多いからです。
例えば、3000万円で中古マンションを売りたい売り手は、3000万円という価格で直接出品することはあまりありません。
売り手も値引き交渉を予想しているため、それを考慮して3100~3300万円程度で出品するのが一般的です。
早期売却を目指す売り手は、僅かな値上げを加えて3000万円で出品することもあります。
交渉分や僅かな値上げ部分が「切り捨て」となるため、切り捨ての割引交渉には応じやすいケースが多いです。
中古マンションの値引き交渉のコツ
中古マンションを購入する際の値引き交渉は、単に値引きを強要すれば良いというわけではありません。
この交渉は、売り手ができるだけ高く売りたいと思い、買い手ができるだけ安く買いたいと思うという、双方の駆け引きの場です。
値引きを実現するためには、いくつかのポイントに注意する必要があります。
住宅ローンの仮審査を早々に済ませる
価格交渉の場は、購入希望者が売主に対して購入申込書を提出する時点から始まります。
ただし、この購入申込書は、住宅ローンの仮審査が通過した場合にのみ提出することができます。
売主としては、まだ住宅ローンの審査が成功するかどうかわからない人と交渉する意欲はありません。
住宅ローンの仮審査には通常1〜2週間ほどかかるため、気に入った物件がある場合は、すぐに仮審査の手続きを進めましょう。
仮審査の際に考慮される金額は、購入希望者が希望する価格ではなく、売り出し価格に基づくべきです。
交渉の結果、値引きしてもらうことができない場合や、希望する価格に達しなかった場合、再度仮審査を行う必要が出てくると、売主からの評価も悪くなる可能性があります。
再度の仮審査をする間に、他の人がマンションを購入してしまうことも考えられるため、売り出されている価格で仮審査を通すことが重要です。
売主や物件の「状況」を探る
価格交渉する際には、まずマンションの状況を詳しく探ることが重要です。
経過期間は特に重要で、中古マンションがどれくらい売りに出されているかを調べる必要があります。
販売開始からあまり時間が経っていない場合、売主は大幅な値引きをすることは少ないでしょう。
一般的に、中古マンションは売り出されてから買い手が現れるまでに3〜4ヶ月ほどかかります。
したがって、売り出されてから3ヶ月経過した頃には、値引き交渉に応じる可能性が高くなります。
しかし、1〜2ヶ月目の場合、売主はまだ他に良い買い手が現れるかもしれないと思っているでしょう。
そのため、この期間ではほとんど値引きに応じてくれない可能性が高いです。
値引き交渉に参加するだけでなく、売主の状況についても知ることが重要です。
この場合、売主の売却理由や意向など、どのような事情があるのかを調べる必要があります。
たとえば、売主が離婚や相続、転勤などの理由で急いで売却をしたい場合、値引き交渉に応じてくれる可能性が高いといえます。
また、売主が新しい住居を購入するために売却をしている場合も、値引きの可能性が高いです。
つまり、売主が「早く売りたい」という事情を抱えている場合は、値引きに応じてくれる可能性が高いです。
ただし、売主の情報を調べることは容易ではありません。
交渉を担当するあなたが直接尋ねることはできませんので、営業担当者を通じて売却の理由について探るのが良い方法です。
正直に言えば、営業担当者も早くマンションを売るためには詳細な情報を提供してくれるでしょう。
あなたが購入者としての味方ではないかもしれませんが、早期売却を促すための情報は提供してくれるはずです。
「交換条件」を出してみる
値引きを得るための最後のヒントは、交換条件を提示することです。
以下に交換条件のいくつかの例を紹介します。
例えば、リフォームは不要なので、その分少し値引きしていただけませんか? また、契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)は免除してもらえれば、その分値引きしてほしいです。
更に、契約日と引渡し日は貴方の希望に合わせることができれば、値引きしてもらえませんか? このように、交換条件を提示する際には、売主にとってメリットとなることを引き合いに出すことが重要です。
先ほどの例では、全て売主にとってメリットとなる条件を提示しています。
ちなみに、最も理想的な交換条件は現金購入です。
中古マンションの購入では、ほとんどの人が住宅ローンを利用しますので、契約から引渡しまでの間に住宅ローンの本審査を通るための時間が必要になります。
しかし、現金一括購入であれば、その期間は必要ありません。
契約から引渡しが即日で完了するため、売主にとっては非常にありがたい条件です。
逆に言えば、現金一括で購入する競合者が現れると、住宅ローンを利用する人は優位性を持つことができないということです。
中古マンションの値引き交渉するときの3つの注意点
中古マンションの値引き交渉をする上では、デメリットも存在しますので、ご注意ください。
値引き交渉しない買主に買われてしまうことも
中古マンションの値引き交渉をする際には、注意が必要です。
なぜなら、交渉することで他の買主にされてしまう可能性があるからです。
交渉権を得るためには、基本的には最初に購入申込書を提出した人が優先されます。
最初の申込者は「1番手」と呼ばれ、次の申込者は「2番手」となります。
もし1番手が値引き交渉を行い、2番手が交渉しなかった場合、一般的には1番手にその旨が伝えられます。
この場合、1番手は値引きしなくても購入することができるかもしれませんが、これは一般的なケースです。
もし1番手と2番手がほぼ同時に申込をした場合、売主は値引き交渉をしない可能性が高いでしょう。
また、1番手と2番手の間に時間差があった場合でも、不動産会社の裁量によって順番が変わってしまうこともあります。
また、購入希望価格が高い人が自動的に1番手とされてしまうことも少なからずあります。
これは、明確なルールが存在しないためです。
そのため、人気のあるマンションや「必ずこのマンションを買いたい」という場合には、簡単に値引き交渉することはおすすめできません。
大幅な値引きを要求するべきではない
「ただ」と思っても、交渉するだけで済むと思っても、3割や4割もの値引き交渉は賢明ではありません。
前述のように、他の買い手との時間差がない場合、特に「この価格は何なんだ?」と思われたら、交渉する前に即座に断られてしまうかもしれません。
中古マンションの適正価格から大幅に安く値引き交渉するのは、マナーに反する行為です。
前にも述べたように、「値引き交渉のポイント」に基づき、売主の状況を把握し、適切な金額で交渉することが重要です。
相手も人間だということを考える
値引き交渉を行う際には、相手が血の通った人間であることを念頭に置くことが重要です。
実際の交渉相手は営業担当者ですから、直接売主と顔を合わせるわけではありません。
しかしながら、値引き交渉において大切なことは、売主が自分の大切なマンションを売りたいと考えている点を考慮することです。
売主の立場に立って考えてみましょう。
「この箇所は劣化していますね」「ここはリフォームが必要ですね」「何ヶ月も売れていませんね」といった要望を通り越して、値引きを強要してくる人に、自分のマンションを売りたいとは思いませんよね?相手も人間であることを念頭に置き、交渉を進める上で「とても素敵なマンションなので、ぜひ購入したい」という前提で進めましょう。
その上で、「こちらも買い替えのため、できるだけ安くしてもらえると助かります」「リフォームはこちらで行うので、費用の一部だけでも値引きしていただけませんか?」といった姿勢で、自分の気持ちを伝えることが重要です。
「こんな人にマンションを売りたくない!」と思われてしまったら、交渉どころではありません。
せっかく気に入ったマンションを手に入れることができなくなってしまいます。
売主も買主も、営業担当者であっても人間です。
思いやりをもって、自分の希望を伝えることが何よりも重要だと思います。
まとめ
高額な中古マンションをディスカウントしてもらえると、とても嬉しいものですね。
しかし、私たちの目的は値引きを得ることではありません。
最終的には、そのマンションを購入することが目標です。
強引に大幅な値引きを要求して、売り手が拒否するような状況になると、全く逆効果になってしまいます。
大切なのは、相手の状況をよく理解し、思いやりを持って私たちの意図を伝えることです。
売主と良好な関係を保ちながら引き渡しを行うためにも、円満な取引を目指しましょう。